うちの近くの区立図書館は名作漫画の品揃えが充実しているのですが、最近借りてきたなつかし漫画。

妖鬼妃伝 (白泉社文庫―美内すずえ傑作選)

妖鬼妃伝 (白泉社文庫―美内すずえ傑作選)

う、今検索したらこれとあと二冊しか出てきませんでしたが借りてきたのはこれを含む「美内すずえ傑作選」全十巻一揃いです。

ガラかめ(『ガラスの仮面』)で超有名な美内すずえさんですが、実はホラー漫画家としてもかなり有名な方なのです。いや、有名っていうのは昔オカルト大好き少女だった自分にとって…ということなのかもしれないけど(と、恥ずかしい過去をバラしてみたり)、多分、世間一般的にも有名だと思う。この傑作選もホラー系のラインアップが充実しております。ざっとタイトルだけを見わたしても、上にある『妖貴妃伝』、『黒百合の系譜』『13月の悲劇』『魔女メディア』……と名作の数々!感謝感激ものでございます。

私が小学校に上がる前から中学前まで(十数年前)、私の記憶に残る限りは、ホラー漫画は美内さんのような一世代前の劇画のかほりが漂ってくるようなタッチの作品が多く(ほらほら梅図かずおさんとか)、今から見るとはっきりいってちょっと泥臭いというか大げさというかパターンも決まりきったような感じの作品が多かったですが*1、小学生の子どもにはこのそういった劇画ちっくの、単純で、分かりやすい怖さをもつようなもののほうがかえって楽しめた気がします*2。そういう意味では美内さんの作品はオーソドックスな手法をおさえつつ彼女なりのオリジナリティとテンポがあって面白かった。第一巻の巻頭を飾る『妖貴妃伝』なんかはデパートや地下鉄なんかの都市的アイテムを上手に使った物語で、日常の中に紛れ込んでいそうな恐怖を幼いながら感じ取っていたことを読みながら思い出しました。

それにしても私が中学校にあがったころから『ハロウィン』などのホラー漫画雑誌が創刊されホラー漫画ブームがやってきて、それまでキワモノ的扱いだったホラー漫画も市民権を得たかのような様相になってくるわけですが、それ以前はじみーな分野だったような気がします。そういった雰囲気のなか傑作ホラー漫画を書き続けていた美内さんは、多分ほんとうにホラーが好きなんでしょうし、昨今の後期ガラかめが宗教色を深め、ご本人も「ピー」(自主検閲)になられたりしたことも考え合わせると感慨深いです。

こうつらつら書いてくると、ホラー漫画の変遷を考えてみるのは面白いような気がします。誰かけんきゅうやってないのかなあ。幼い頃読みまくったホラー漫画の数々を大人になった今の視点からまた捉えなおしてみたら面白いのにな、自分の人格形成にどうかかわってくるのか判然としそうで、などと思ったのでした。

*1:梅図のエピゴーネンが大量発生したのもこのころでは!?

*2:山岸涼子さんなんかもこの分野の作品を書かれていますが、ちょっと心理描写など高度な印象がありとっつきにくかった。