やっぱり停滞しておりました…。リハビリ、リハビリ。

これを読みました。奇才の美術家森村泰昌が書いた美術入門書。NHKの人間講座の文庫化らしいです。

なんでもそうだけど、第一線で活躍している、一流の人による入門書っていうのは、ものすごく面白い。わかりやすく書いているっていうのもあるけど、その背景にある知識をどんなふうに解釈して、ちぢめて、面白く表現するのか、っていうのに絶妙のさえが見られるから。(ただし、学者の書く入門書は面白くない場合が多いんだけどね。^^;)

森村は最初の部分で以下のようなことを述べています。

こんにちは。私は作品を作っている美術家です。「美術」はどうも難しい、見かたが分からない、としばしば言われます。美術が分かるには、専門的な本を読んだり、美術の歴史を知っていないといけないようです。これでは美術の世界に入っていきにくいですよね。
私はたぶん、みなさんより幾分長く「美術」にかかわってきていて、自分なりの美術作品を鑑賞する技、美術を身近なものとして楽しむテクニックを考案してきました。この全八回のお話を通して、みなさんにそれをお伝えできたらと思っています。

そして「美術」をてがかりに世相を考えるっていうところから出発して、現代の美術と昔の美術を同列にならべつつ、その両者に共通する特色を現代の「世相」と結びつけて解説していきます。

本書では、さまざまな画家の特色が示されていくのですが、それが、森村独特の感性で選ばれていて、面白い。また、入門なのでむずかしい専門の知識は必要ないと断ってはいますが、もちろん、本人自身はちゃんと専門の知識をもっているのです。勉強している。そこを踏まえた上で、自分のアート・パフォーマンスにつながるような断面を切り出してくる。つまり、この本は、いわば、森村泰昌入門にもなっているわけです。

軽く読めるので、現代美術にも古典美術にも興味ある方はぜひ読んでみてください。